コワイ誤嚥事故

 誤嚥とは、一般に異物を気管又は気管支に詰めることを言います。

 放っておくと最悪の場合、息が出来なくなって(窒息)命を落としてしまいます。

 誤嚥の原因は様々なですが、その一つに認知(痴呆)症などで物を認識することが出来なくなり、食べ物とそうでないモノの区別がつかなく思わず口にした物を詰めてしまうということがあります。


 実際に、自分が勤めている老人ホームでも認知症の方が誤嚥事故を起こしたことがりました。

 それも、一般成人では考えられない物を口にして・・・・ (-_-;)

 
 夕食のため入所者の方をベットから起こし食堂へ誘導しようとしたスタッフがその異変に気づきました。

 寝たきりで重度の認知症があるAさん(89歳)を起こそうとしたスタッフが血相変えて看護師の応援を呼びました。

 駆けつけてみると、血の気を失ったAさんが苦しそうに呼吸をしていました。看護リーダーの看護師は直ちに併設する協力病院へと電話連絡し搬送準備にとりかかる一方、その他の看護師は僅かな搬送準備の間Aさんの様態を観察しながらバイタルサインを測定しました。

 Aさんの呼吸は依然として苦しそうで口唇チアノーゼ(唇が紫色になること)、意識レベル低下(気が遠くなること)が認められました。さらにSpO2(動脈酸素濃度)は70%代(正常95%以上)。一刻の猶予も許されない状況でした。

 病院へ搬送するためストレッチャーが運び込まれると酸素吸入を行いながら素早く併設病院の処置室へと搬送しました。

 搬送した病院の処置室では待ちかまえていたDrがAさんを運び込むと同時に、「挿管!」と指示を出します。
(挿管とは口から管を直接気管まで入れて確実に呼吸を助けることが出来るようにする処置のこと)

 Drが挿管するため喉頭鏡(こうとうきょう)と呼ばれる器具で喉の奥を開いてみると・・・・
そこには、白く丸まった異物が認められたそうです。

 「これ、誤嚥しとるね~」、「マギール鉗子ちょうだい」と異物を取るための鉗子を渡します。

 「でるよ~」とDrが言うと鉗子がつかんでいたのは白い細長い切れ状の物体が丸まったもの・・・・

 なんと、包帯でした。

 数日前、左下腿に出来た血腫(血豆)を破らないようにとガーゼと包帯で保護していた包帯を何らかの拍子に解いて口にしてしまったようなのです。

 Drの処置で異物がとれ楽に呼吸が出来るようになったAさん。
チアノーゼを呈していた唇は数分後には消失し意識も正常に戻りました。

 念のため、30分ほど酸素吸入しながら心電図・SpO2モニター監視することになりましたが、特に異常が認められないため無事にご帰還と相成りました。


 今回、Aさんの場合、誤嚥してから発見が早かったことや詰めた包帯に隙間があったため僅かながら呼吸が出来たため異物を除去する処置だけで事なきを得ることが出来ました。

 さらに高齢者の場合、異物を誤嚥することで心臓発作が起きたり、肺炎を起こしやすくなります。つまり、誤嚥することで直接的にも間接的にも命を落としてしまうことになってしまいます。


 高齢者を多く扱っている病院や老人ホームなどでは、認知症がある高齢者に配慮し誤嚥などの事故がないようあらゆる事を想定してその対策を講じています。

 でも、希に想定外の事故が起きてしまうことがあるのです。
その希な事故を二度と起こさないように自分の施設では事故対策委員会が設置され、同じ事故を起こさないように施設内で話し合いや対策を施したり、学会活動へ参加して全国の施設ともその知識を共有し認知症の方に安心した入所生活を提供できるような活動が行われています。

 
 下の器具がAさんの命を救った『喉頭鏡』と『マギール鉗子』です。
画像
 
 Lの字をしている器具が「喉頭鏡」、ハサミを変な風に曲げたような器具が「マギール鉗子」です。

 これらの器具は、この誤嚥事故をきっかけに患者さんを併設病院へ搬送するより早く、医師が駆けつけたときすぐ使えるように設置されるようになりました。


 因みに、「喉頭鏡」と「マギール鉗子」は全ての救急車に搭載され、救急救命士を始め一定以上の救急隊員資格を持つ救急隊員でも使えるようになっています。

この記事へのコメント

2006年09月03日 22:36
恐ろしいですね。誤嚥事故。
お正月にお餅を喉に詰まらせて、というのは聞きますが、、包帯ですか(^^;;
そういった事故にも対処出来なければならない、気ままさんの職業はスゴイなぁと感心しました。
2006年09月04日 02:49
今晩は、
私の職場では、誤嚥の第一位はご家族が「患者さんの要求」に応じてに飲まされる「お茶」です。
 なぜか、多くのご家族は「お茶」が一番危ない飲み物であると言うことはご存じないようです。
 肺炎を起こされて亡くなられる方が非常に多いです。
 病気の種類によってしばらく絶飲食の方がおられますが、近くに何もないことを確認していても想像も付かない物を口にされていることがあり驚かされます。
 お互い気を引き締めて行かなくてはなりませんね。
2006年09月07日 10:31
どーるますたーサン
認知症が進むと何でも食べ物と思い口にされるケースが多く、私物や公の物品の管理(石けん、消毒液、観賞用植物に至るまで)には大変な面があります。
また、面会者が親切心で「同じ部屋の方にもおやつを・・」とあげた蜜柑で誤嚥事故が起きた例もあり誤嚥事故には本当に驚かされる事が多々あります。
2006年09月07日 10:55
ひこうちゅうねんサン
お茶ですか・・・本当に侮れないですよね。
自分の施設でもお茶など飲み物が原因で誤嚥性肺炎を起こした事例が少なくありません。
中には、誤嚥性肺炎で絶食中にもかかわらず(家族には絶飲食中であることを説明し”絶食中”の札をベットに付けているのに)家族がジュースをあげて再誤嚥し呼吸不全に陥って病院へ緊急搬送したケースがありました。
こうした誤嚥事故を防ぐためにも、オリエンテーション時や掲示板などでおやつの持ち込みについて協力を求めたり、絶食時には医師・看護師からその必要性を説明するのですが・・・
面会者が知人・友人だった場合それを知らずに口にさせて誤嚥する場合もあるので、誤嚥事故に対しては、ベッドサイドの環境整備から面会者の対応に至るまで本当に気を抜けません。

本当に気を引き締めなくてはと思います。
2006年09月08日 02:44
ベッドサイドの目に付くところに「絶食中」「絶飲食」「ギャッジUP禁」などの札をぶら下げてあっても、ご家族やお見舞い客が持ってきた物を寝たまま食べさせて誤嚥しては大変と わざわざギャッジUPさせて食べさした後に「気がつきませんで・・・」。
次の日に予定していた検査がフイに。
 泣きそうな事もたくさんあります。

売店が、売れ残った物を移動販売と称して売りに来るのを黙ってみているドクター連中に腹が立ちます、糖尿病の人にも言われるままに売っていますから。
 病気を重くして入院を長引かせる気のようだから。
 ドクターや看護師、販売人にもその辺のこと言ったことがありましたが、ドクターも看護師も「そうですね・・・!」のひとことだけ。
 販売人は「そう言われましても・・・?」。
ここは、どうなっとる って言ってもみんな知らん顔、寂しいです。
 お金を稼がなくてはいけないのは判ってはいますが、そこまでするか? って憤慨しています。
2006年09月09日 12:06
もう20年位前に、友人の家で10人くらい集まって、コーヒーを頂いていた時の事ですが、私がコーヒーを飲んだ瞬間、気管に入ってしまい大騒ぎになった事があります。
その時の周りにいた友人達は、右往左往しその時の言葉は今でも覚えてます。
救急車呼んで!あ~~ぁ顔の色が~~~血の気が無くなってきてるよ~~~!早く!救急車~~!背中を叩く者がいたり、自分でもあ~死ぬな~!と思った瞬間咳き込んで、復活したのです!
一同がホッとしたのは当然ですが、もう少しで救急車を呼ぶ所でした。
お年寄りの誤嚥事故に、遭遇した事何度もありますが、無知な見舞い客が殺しに来たのかと思う時ありますね・・・
矛盾する事もたくさん有ります。
些細な異変に気付くことがとても大切ですね。
身をもって経験して、あの苦しさは・・・
高齢者にはね・・・
2006年09月09日 13:20
 お茶やコーヒーはまだいいですが、お酒やビールだと気管支などがアルコールで麻痺して咳き込まない場合が出てくるのではないでしょうか。
 なんて考えていたら お酒飲めなくなってしまいそうですね。

上向きに寝たままでお茶を飲む方がおられますが、ご本人は平気なようですが私は上向きでは誤嚥しました、喉の構造が違うのでしょうか。
2006年09月11日 07:21
月桂樹さん
コーヒーを誤嚥されたようで大騒ぎになった物の大事に至らずよかったですね。
健康な成人でもわずかな飲み物でこれほど苦しいのですから、高齢者にとって誤嚥することは相当苦しいものかもしれませんね。
本当に、無知な面会者の誤嚥事故は恐いものがあります。
2006年09月11日 07:33
ひこうちゅうねんサン
アルコール類の場合酔いが弱ければ刺激がソフトドリンクより強いため激しく咳き込む傾向があるようですが、酔いが深くなればそれも弱くなるようです。
誤嚥すれば何であれ誤嚥性肺炎の原因となりますが、アルコールや胃酸を帯びた吐物などは刺激が強く高齢者では難治性となるみたいですね。

因みに、人がものを飲み込む際には喉頭蓋が気管をカバーし食道では蠕動運動があるので水平仰臥位だろうが逆立ちしようが解剖学上、誤嚥しないと言うことですが、実際には飲み込みにくいのも事実です。(看護学校時代、演習で体験してみました)
リカ母
2006年09月30日 20:21
掃除機の先につけて吸引する装置があるということでしたが、効果はいかがなもなのでしょうか?
2006年10月01日 09:49
リカ母サン、コメント有難うございます。

一般の掃除機に取り付けるタイプの吸引用の器具は自分の施設にもあります。
消防署の救急隊員により発明された器具のようで、使いやすいように色々と工夫されているようです。

しかし、一般家庭で誤嚥があった場合この器具を使うのは最後の手段だと考える方がいいと思います。
誤嚥事故が起きた場合、まず背中(肩甲骨と肩甲骨の間)を叩いてみる、ハイムリック法を試してみてそれでも取れないとき、この吸引用の器具を用いるのがベターだと思います。
吸引は安易で有効な方法だと思われますが、下手すると口や喉を傷つけたりチューブで異物を奥へと押し込め逆に取れにくくなったりする可能性があります。
異物除去に関しては、簡単ですが解剖学的、技術的な知識が必要なので消防署や赤十字社で行われている救命講習を受講されることをお勧めします。
2006年10月14日 01:48
先日、はじめて「喉頭鏡」を使用する現場に立ち会いました。
「喉頭鏡」にも「短い」ものと「長い」ものがあるようで、それほど長い訳ではないのですが「救急カート」には「短い」ものしかなくて「長い」ものを借りに走りました。
 小さな電球が付いているのも初めて知りました。
 日頃、誰もが無関心な「救急カート」、備品のチェック以外に電気製品のチェックも必要なことも知りました。
2006年10月14日 20:07
ひこうちゅうねんサン
自分もはじめて「喉頭鏡」というものを見たとき「何とも不思議な器具だなぁ・・・」と思いながら見ていました。
そして、はじめて喉頭鏡をセットしようとしたとき手持ち部分とブレード(電球が付いているところ)がうまくセットできなくて戸惑うことがありました。

喉頭鏡、救命の場面では絶対必要なもので、いざというときすぐ使えるように定期的にチェックするように自分の施設では決められています。

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