恩師との再会・・・・そして、永久の別れ・・・・

 桜の花がちらほらと咲き始めるこの季節、恩師I先生との切ない再会を思い出します。

 恩師と言っても学校の先生ではなく、保育園の頃の先生(保母さん)ですけど・・・。


 I先生との再会は意外でした。
休み明けの勤務の日、新規入所の方が1名入所されるとケアマネージャーから連絡があり入所の準備をすることになりました。

 部屋のベットメーキングに入所書類の作成・・・それにカルテの作成・・・・。
いつも通りに入所準備を進め書類を書き込んでいると、なんとなく聞き覚えがあるような名前・・・・・I.Yさん、80歳、女性・・・・・

 生活歴に目を通すと・・・・・  ○×年 W保育園 保母(60歳で退職) ・・・・・

 W保育園で保母!? その頃、住んでいたところはK市!?

 W保育園といい、在職されていた時期と言い・・・・ 一致するんです。 

 自分が通っていた保育園と!! しかも、I.Yっていう先生いたような覚えもあるし・・・。
 I.Y先生、そう、W保育園の主任をされていた先生で園児一人ひとりをとても可愛がられていたことを思い出しました。

 間違いない!! 自分が保育園に通っていた頃お世話になっていた先生だ!! 確信しました。


 保育園でお世話になった先生に会える!! ・・・・どことなくウキウキした気分でI先生が入所される時を待っていました。

 そして、待ちに待ったI先生がいらっしゃいました・・・・・・。

 感動の再会?? ・・・・・・・・・

 しかし、I先生は重度の認知症で自分が保母(保育士)をしていたことも、自分の子供が何人いるかも、ここが何処か、今日が何日かも分からない状態でした。

 勿論、自分の事なんて覚えていらっしゃいませんでした・・・・・・。


 I先生が入所されて2,3日ほど経ったときのある日、I先生のもとに御家族(娘さん)の面会があり、保母さんをされていたときの写真を娘さんとI先生が懐かしそうに見ていらっしゃいました。
I先生が話されている内容といえば、要領を得ずチグハグですが今まで見たことのないような笑顔で娘さんとお話しされていました。

 そうだ・・・写真だ・・・・少しでも輝いていたあの頃を思い出してもらおう!!・・・・と、娘さんに写真を床頭台に置いていただくよう提案し快く承諾していただき、I先生のベットの周りには想い出の写真でいっぱいになりました。

 さらに、職場だったW保育園の園舎が写っている写真を見たがっていたと娘さんからお話を聴き、園舎の写真だったら自分が持っているW保育園の卒園アルバムに載っているので後日コピーした写真を差し上げることにしました。


 それから、連休明けの2日後の勤務の日にW保育園の園舎をコピーした写真を片手に意気揚々と詰め所に行くと・・・・・・。

 I先生の名前が入所者名簿から除かれていました・・・・・・

 I先生は、前日(自分が休みだった日)の早朝に心筋梗塞を起こし併設病院へ搬送されましたが処置の甲斐なく永眠されていました・・・・・。

 その日のお昼過ぎ、娘さんが挨拶に見えられた時、「是非、I先生にこの写真あげてください」と園舎の写真を渡しました。


 I先生のキーパーソン(保護者や身元責任者に当たる人のこと)である娘さんが「短い間でしたがお世話になりました・・・」と言葉を詰まらせながら2度3度、会釈され詰め所を後にされました。
 
 娘さんが詰め所を後にされた直後にふと、バインダーから外されたI先生のカルテを見ると余りにも薄すぎる記録がつかの間の再会であったことを実感させ・・・・・ 20数年ぶりの再開なのに・・・ と、切なく淋しい思いになりました。

 ぼんやりと窓の外をみると・・・ 桜の花がチラホラと咲き始めていました。

 
 あれから、桜の花がチラホラと咲き始める姿を見る度、I先生とのつかの間の出会いを想い出します。

この記事へのコメント

2007年03月27日 09:48
おはようございます。
仕事中なのですが、ちょっと涙ぐんでしまいヤバイです(^^;
今お客さんが来たら、怪しい目で見られそうです。
年のせいか涙もろくなってしまって・・・。
温かいけれど、切ない。
切ないけれど、忘れがたい。
サクラの花びらが舞う情景が目に浮かびます。

2007年03月27日 12:54
良いお話ですね・・・。再開したかと思えば、予想だにしないこととなっておったなんて・・・。うう・・・。私は幼稚園の頃の先生にどこかで会ったような記憶がありますが今は幼稚園自身が廃園となりどうされておるのか・・・気になります・・・。
2007年03月27日 13:41
予期せぬところで懐かしい恩師との再会。時間がお互いの立場をスッカリ替えていたのですね。
せっかくこれから・・という時に、あまりにあっけない別れでしたね。まさしくサクラの花のようですね。
カルテの薄さにつかの間の再会を思うなんて、感受性も表現力も秀逸で、じーんと胸にしみました。

私ごとですか、恩師との再会のエピソード秘話、私もひとつもっているのですが、考えすぎて煮詰まってしまい、未だにうまく書けないでいます。
なんだか近頃ブログを読むのも書くのもスランプだと実感しており、気ままさんのこのように素直な文章表現力が、羨ましいと思いました。
2007年03月27日 23:08
私も昨年3月末の夜勤の日に、義父と同じ名前の新しい入院患者さんを見つけ対処したヘルパーさんに年齢確認したら40代後半というので、同姓同名の別人と思っていました。
 興味を持ったのでカルテを見てびっくり、当の本人だったのです。
 15年以上も会っていなかったので、顔が以前より細く感じてしばらく様子を見ていたら、気がついて「あっ、なんでここにおる?」「ここ、私の職場」「へっ、悪いことは出来ないな」「どうしました?」
 てな具合でしばし事情聴取。
大腿骨頸部骨折ですぐ手術。
 78日目に肝臓癌のため他界。
最後の親孝行が出来ました。
 最後まで痴呆が出なかったことが幸いかなって思っています。
 満88歳でした。
看病の間、いろいろな話を沢山してくれました。
思い出をたくさん残してくれました。
2007年03月28日 00:28
こんばんは、気ままさん。
自分を育ててくれた恩師、先生って、いつになっても、そしてお互いどんな立場になっても、永遠に恩師なんですよね。私(クキ父)を育ててくれた先生方も、次々と他界され、そのたびに何とも悲しい気持ちになったものです。
そしてこのお話し、とても素晴らしいですね。心が洗われるようです。やはり医療の現場にいらっしゃる気ままさんならではのお話と思いました。感動しました!この殺伐とした世の中で、こんなに暖かくて、ちょっと切ないお話が、あるんですね。
ありがとうございました。
2007年03月28日 21:28
ふくだサン
それまで桜を見ると「花見だ!!」って心ウキウキ!
「花より酒!!!」って感じだったんですが・・・
I先生とのエピソードがあってからは、桜の花が咲いているのを見るとなんだか切ない気持ちになります。
I先生は認知症で、会話はちぐはぐでしたがもう少しお話ししたかったのですが・・・突然の急変でとても残念でした。
2007年03月28日 21:43
オーミヤさん
I先生の急変は本当に予想もしませんでした。
それに自分が通っていたW保育園も少子化の影響で廃園になるとか、ならない、とかの噂も聞こえてきます。
看護師という仕事柄、”人の死”に慣れていますが、この時ばかりは、淋しいというか・・・ 空しいというか・・・ 切ないというか・・・ 切なくて悲しい気持ちになりました。
2007年03月28日 22:12
レイコサウルスさん
そうなんです・・・20数年という月日(時間)というものがI先生と自分の立場をすっかり替えていました。
I先生、認知症でなにも分からなくなっていたかもしれませんけど、”何らかのかたちで感じて欲しかった、少しでも、分かって欲しかった、”・・・・・。
もっとゆっくり、お話ししたかったのに・・・とても残念でした。

実はこの記事、書いてはみるものの、(つかの間のことだったけど、色々と伝えたい思いがありすぎて・・・)まとまらず結局は削除してしまう事が何度かありました。
で、チラホラと咲き始めた桜の花を見て思ったことを素直に書いたのがこの記事です。
今スランプなのですか?
自分も、レイコサウルスさんの記事を読んで、「さすが、文章書くの上手いねぇ!!」と思うことばかりです。(すいません、生意気なこと言ったかもしれません)

2007年03月28日 22:31
ひこうちゅうねんサン
それも奇遇な再会でしたね。
昔、親しかった人とこんな形(患者や入所者)で偶然に再会したときその人とのエピソードが走馬燈のように駆けめぐりませんでしたか?
お父様は入院78日目でお亡くなりになったそうですが、入院している間は身内から看てもらい、お互いに想い出を語り合い、最期を迎えられとても幸せだったと思います。
2007年03月28日 22:54
クキさん
そうですね。たとえ認知症になろうとも、オムツを着けていようとも、寝たきりになっていようとも、恩師は恩師でした。
この記事、アップするか削除するか迷ったんですけど、この記事を読んで感動していただけたようでこちらとしても思い切ってアップしてよかったと思いました。 有難うございます。

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