急変!・・・一過性脳虚血発作

 前回(っていっても1年ほど前になりますが)”急変・・・迷走神経反射・・・”って記事でも書きましたけど、高齢者は一見元気そうに思えてもフッとした瞬間急変する事が良くあります。

 今回も、普段はとても元気で施設内をシルバーカーで活発に歩き回り、周りの人とお話をするのが好きなYさん90歳女性(介護度2、軽度の認知症有り、糖尿病、脳梗塞)が廊下のソファーに座り楽しく同室者の方とお話をしている最中、急に全身が脱力状態となり倒れ込みました。 

 Yさんとお話をされていた方の悲鳴に似た叫び声を聞きつけ近くのスタッフが駆け寄りました。
 
 スタッフが倒れ込んでいるYに呼びかけましたが、グッタリとして返事がありません。すぐに他のスタッフ2人が駆けつけ看護師へ連絡しました。


 連絡を受けYさんのもとに駆けつけると、Yさんは全身脱力状態、顔面蒼白、冷や汗をかき呼びかけに対してかろうじて頷くなどの反応がありますが言葉を返しません、さらに左上肢(腕)は何となくだらりとしていました。

 直ちに、呼吸の状態を確認しYさんを横に向かせ気道確保したあと併設病院へ連絡し搬送するためのストレッチャーが準備されるまでの間、バイタルサイン(血圧、酸素飽和度)を測定しながら、意識状態を確かめるためYさんに呼びかけます。また、糖尿病もあるため簡易血糖測定器で血糖も測りましたが血糖値は正常。

 血圧170/98【mmHg】、脈拍78【回/分】、酸素飽和度85~90【%】、血糖180【mg/ld】、意識状態やや改善し呼びかけに対し閉眼したまま「う゛~っ゛…」と返事あり。
すぐさまストレッチャーにYさんを移し、呼吸状態や意識状態を注意深く観察しながら併設病院へと緊急搬送・・・
 


 併設病院の救急処置室へ到着。

 待ち構えていた医師と外来看護師にYさんの発症の状況や直後のバイタルサインを簡単に報告、医師の指示のもと外来看護師と協力しモニター装着すると同時に採血しルート確保(点滴)します。

 この間にYさんの意識が徐々に回復し声かけにも開眼し返事が出来るまでになっていましたが言葉が出にくく呂律がまわりにくい様子でした。
 モニターが装着されるとその画面には、心電図、血圧、酸素飽和度、呼吸数が表示されます。
モニター上の心電図波形は正常、血圧156/88【mmHg】、脈拍70~75【回/分】、酸素飽和度98【%】…医師はモニターを確認しYさんの全身状態を診察、意識障害、呂律不良、軽度の左上肢麻痺がある事から再梗塞を疑い頭部CTを撮る事になりました。

 CTの結果、以前からの古い梗塞は認めましたが新しい梗塞はなし、頚部エコーの結果動脈に脂肪の沈着あり、検査が終わった時点で意識障害、呂律不良それに左上肢の麻痺の症状がほとんど無くなったことから、『一過性脳虚血発作(TIA)』であると診断されました。


 その後Yさんは、併設病院の処置室でモニター監視下で1時間経過観察を行った後、バイタルサインも安定、症状も改善したため入院の必要もなく、予防のための内服薬が追加処方されただけで施設にご帰還となりました。

 施設に戻ってからも1両日は安静で経過観察となりましたが、その後、発作を思わせるような症状は出現せず、3日後には以前のように施設内を活発に歩き回る事ができるまでに回復されました。



 一過性脳虚血発作(TIA)とは・・・ (詳しく説明すると、長くなるのでここでは超簡単に説明しますね) 
 脳の細小動脈が一過性に詰まったり、細くなって血液の流れが減少して起きる脳卒中の一種で、半身の麻痺やしびれ、軽い言語障害などを起こしますが、たいてい数分から数時間で感覚が戻り症状は消失します。症状が数分から数時間で治まるのは、その間に血栓が溶けて流れたり、減少した血流が回復し元のように流れ出すからです。
 
 また、一過性脳虚血発作の場合すぐに症状が極軽微で気づかなかったり一過性であることから軽く見がちですが、多くの場合脳梗塞を起こす危険性が高くなるので専門医(脳外科)に受診し適切な処置や生活指導を受ける事が大切です。

 治療としては、再梗塞を防ぐ事が目的となりますので薬物療法(抗凝固剤、血小板凝集阻止剤)が主になりますが、時には(原因により)手術なども行われます。

この記事へのコメント

2008年03月01日 11:18
緊張の走る記事で、ドキドキしながら拝見していました。
倒れられた方が回復されて良かったです。
早い処置も良かったのでは?と思いました。
私も高齢の父が居るので人事では有りません。
落ち着いて行動しないといけない!そう思いました。
勉強になる素敵な記事をありがとうございます。
2008年03月01日 14:58
急変への対応、お疲れ様でした!ある意味、TIAで良かったですね…経過をみないと、回復するものかどうかわからないので、それまでは緊張感が続きますからね。
研修で麻酔をかけながら、高齢者の方の予備能力の少なさを私も実感しています。
2008年03月01日 17:56
頚動脈の狭窄度はどうだったんでしょうかね?
年齢を考えればCEAのオペは難しいかな??
この後、脳梗塞を起こさなきゃいいですけど。。。

私も先日、転倒患者さんの運動機能をチェック
してて、「あれ?」って思うことがありました。
右上下肢に麻痺???
脳梗塞の再発でしたが処置が早かったため
現在はリハビリで改善してます。
さぼてんママ
2008年03月02日 20:50
気ままさんの所は体制が整っていて素晴らしいです。

私の所は、協力病院も無い日帰り施設ですので…対応は私のみという環境です。

先月、気ままさんの書かれた状況が三回ありました。

三回目ともなると、他のスタッフも慣れ動くように…。

季節の変わり目。気を張っていきたいと思います。
2008年03月02日 22:01
ビオラさん
自分の施設の場合、病院併設型なので急変があればすぐにストレッチャーで担ぎ込めるので処置が早かったのも良かったのかもしれません。
TIA、特に高齢者ではよくあることなので発症時は落ち着いて気道を確保(体を横に向ける)処置をして救急車を呼ぶ事が大切だと思います。
2008年03月02日 22:09
あきサン
そうですね・・・TIAでよかったと思います。
併設病院は整形外科が主なので脳外ともなると専門外になり転院を余儀なくされます。
そうなると・・・(救急車のたらい回しじゃないんですが)受け入れ先の病院がなかなか無くて病院探しに一苦労する事があります。
また、高齢者って個人差がありますが本当に予備能力の少なさ、急変すると益々それが低下するのを感じます。
しかし、その一方で驚異的に回復される高齢者もいらっしゃるのですから・・・「生命って不思議なものだなぁ」と思います。
2008年03月02日 22:22
この方の狭窄度は50%ほどだったと思います。
90歳という高齢のためオペするにはリスクが高すぎる事や本人と家族が侵襲的治療・延命を希望せず、症状がすぐに改善されたのでこのまま保存的療法で様子みる事になりました。
CEA…一目見たとき腫瘍マーカーだと思ってしまいましたが、この場合「頸動脈内膜切除術」のことでしたね。

高齢者の場合、梗塞や出血が徐々に進行して症状が顕著に表れない場合があり日頃からよく観察する事が重要で「あれ?」、「今日はなんとなくおかしい・・・」という事が異常の早期発見に繋がったりするので、一般状態の観察を常に欠かさない事が大切ですよね。
2008年03月02日 22:32
さぼてんママさん
日帰りの施設だと、老健以上に看護師や医療設備が少なく出来る応急処置も限られるのでその対応も大変ですね。
しかも、1ヶ月で3回も急変者があったとは・・・本当に大変でしたね。

これまで脳卒中を起こすリスクファクターの一つに気温の変動(低温)があるとよく言われていましたが、その他に気圧の変動も大きく関与しているのでは?と専門科の間でいわれてるそうですね。
2008年03月02日 23:49
こんばんは。いやはや・・・・私も、この記事、ドキドキしながら拝見いたしました。ご高齢...という事もありかなり心配ですよね。人間年をとるとどこかしら病気が出てきてしまうのですよね。でも、急変した時に回りのスタッフの方達の迅速な処置のおかげで、大事には至らなくてよかったですね。ホッとしました。
2008年03月03日 21:47
みいサン
人間年を取ると誰しも片手以上の病気がでてきます。
一過性脳虚血発作・・・簡単に大ざっぱに言えば脳貧血が起きたような状態ですがこのような場合、適切な処置が行われないと命の危機さらされます。
一過性といえど侮れませんし、Yさんの場合、発見が早かったのでよかったのではと思います。
2008年03月11日 03:20
最近、女性の化粧をさせられることが多くなって戸惑っています。
 私の周りに化粧する姿を見せてくれる女性がいないからなのですが・・・トホホ
 どこに何を使えばいいのか、どの程度すればいいのか左右対称にと言われましても?
 口紅の指し方しかわかりません。
若い頃に彼女の化粧法をしっかり勉強しておくべきでした、失敗しました。
 職業柄、何のことかお解りだとは思いますが。
いずれは、とは思っていましたが 今までは(運良く?運悪く?)する機会がありませんでした。
2008年03月11日 21:31
最期のお化粧ですね・・・・自分もあまりした事がありません。(最期のお化粧ですから粗相したら大変・・)お化粧するときは女性スタッフにやっていただきます。
でも、施設や病院によっては男性もスタッフもやっていますので自分もお化粧の仕方を勉強しなきゃと思います。
また、自分の施設では家族の希望により清拭やお化粧を家族の方と一緒にする事もあります。

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